プロジェクトタイトル
サステナブル?ディスティネーション?マネジメントシステムを構築するためのメカニズムの探索:組織間連携の視座から
研究ユニット
代表者
メンバー
プロジェクト期間
2023年4月27日 ~ 2024年3月31日
プロジェクト概要
日本においてSDGsやサステナビリティという用語が地域や企業等の組織に普及している。実際には、旅行者を受け入れる際に、何をどのように進めるのかは運営主体となる観光目的地に委ねられている。本研究は、Ritchie & Crouch(2003)が示した持続可能なツーリズムの考え方の1つであるSteps to Destination Success(StDS;観光目的地が達成すべきステップ)に着目し、ビジョン設定、行動指針、実施計画などのディスティネーション?マネジメントシステムについて、組織間連携を視座に研究する。具体的には、九州オルレと宮城オルレについて、オルレ旅行者および観光供給側の組織間連携についてケーススタディの方法で調査?分析する。2つのオルレは、韓国の済州島を起源とし、「海岸線や山などの自然、民家の路地などを身近に感じ、自分なりにゆっくり楽しみながら歩く」ことをコンセプトとする済州オルレの姉妹版である。また、比較研究として、観光目的地としての潜在的な可能性をもつ熊野古道大辺路ルートを調査する。結果として、運営上のキャパシティの設定方法、旅行者への価値提供の範囲設定、総合的な運営システムの構築などからなるメカニズムを解明し、サステナブル?ツーリズム研究および持続可能な観光目的地の計画および開発の発展に寄与する。
成果報告
本研究は、Ritchie & Crouch(2003)が示したSteps to Destination Success(StDS)に着目し、ビジョン設定、行動指針、実施計画などのディスティネーション?マネジメントシステムについて、サステナビリティを視座に、組織間連携を中心として調査?研究を実施した。具体的には、明確なコンセプト設定のもとコース開発や運営が行われる済州オルレの手法を導入した九州オルレについて、年1回実施されるオルレ?フェスティバルにおけるアンケート調査、コース管理者とともにコースを視察しながら意見交換する方法など、量的データ及び質的データの収集を行なった。また、比較対象として宮城オルレでの新コース開設時における体験的調査、広域の観光目的地としての潜在的な可能性をもつ熊野古道大辺路ルートにおけるコンセプト設定に関わる現地視察調査を実施した。
成果の一部を下記に示す通り公開した。第一に、[1]の学会報告では、レジャー研究の観点から歩くコンテンツ全般への研究展開について積極的なコメントをいただき、研究深化への示唆をえた。第二に、[2]の論文掲載では、2022年度オルレフェスティバル(年1回、全18コースが何らかの形で運営に関与)におけるアンケート結果を認定コース運営協議会から共有いただき、分析結果から参加者の傾向を示した。
また、2023年度オルレフェスティバルのアンケート設計への参与観察に繋がった。第三に、[3]の論文掲載では、オルレのコース開発および運営のコンセプトとして、「ハッピートライアングル」(地域の自然、地元住民?地元事業者、来訪者が相互に繋がり、それぞれに成果をシェアすること)を示し、StDSとの関係性について議論したのち、ディスティネーションマネジメント、ソーシャルビジネス、レジャー&ツーリズムの3つの論点と研究課題として今後の展開方向性を示した。本研究を推進するなかで、学術的な側面はもちろん、コース開発や運営に関わる実務者やオルレを愛好する方たちから多くの示唆をえて、「歩く観光」として研究を発展させるきっかけ得た意義深い調査?研究となった。
<学会報告及び論文掲載>
- 八島雄士, 金宰ウク, 豊島茂.「観光目的地に関係する組織間連携の実際 -九州オルレの取り組みを事例に-」. 余暇ツーリズム学会2023年度全国大会自由論題報告,2023.10.29,流通科学大学
- Kim, J.W., Yashima, Y. & Toyoshima, S. (2024). Challenges of Kyushu Olle as a sustainable tourism resource: A questionnaire-based survey in Japan. Wakayama Tourism Review 5, 21-23
- 八島雄士, 豊島茂, 金宰ウク. (2024). 「ウォーキングツーリズムと地域発展の研究と研究可能性-九州オルレの取り組み-」『余暇ツーリズム学会誌』11, 105-112.