【レポートup!】第38回わだい浪切サロン「岸和田で見る星空から~大宇宙を感じてみよう~」
公開日 2011年12月21日
日時: 平成23年12月21日(水)19:00~20:30
話題提供者: 富田 晃彦 (教育学部教授)
ご一緒に、星の話で盛り上がりたいと思います。
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<?当日のレポート> 富田先生のおはなしと少しの感想
私は以前、岸和田に6年住んでいました。そのころにこの浪切ホールができたのですが、きょうは迷子になってはいけないと思って(中途半端に知っているというのが危ない)、岸和田駅からタクシーで来ました!(※? 駅から一直線の突き当たりで迷子にはならないと思いますが???)
★はなし1 見れば、見える
「大阪にいると自然がなくてかわいそう」と言われますが、そんなことはありません。七夕の夜に、大阪の四天王寺で空を見上げたら、銀河鉄道の始発駅、北十字星がちゃんと見えます。途中の停車駅の星座だって見えます。星空は、いろんなものが見えると思えば見えるのです。
見れば見える、きょうは、岸和田の空にぽつぽつ見える星から現代の宇宙が見えてくる…というお話をしましょう。
さて、季節の星座というのは、夜の9時ごろに頭の上高くに見える星座のことです。夏の星座は夏だけに見えるのではありません。夜9時よりも早い時刻だと前の季節、遅い時刻だと次の季節の星座が見えます。だから、星座の勉強は一夜漬けが可能です(笑)
★★はなし2 「ああ!」からはじまる
私は理系ですが、理系ってどういうことでしょう。自然を見て、「ああ!」とか「おお!」とか直感で感じるのが理系人間です。そして、その直感をルールに従って科学的な言葉、文章にすること、これが理科の勉強の大半を占めるのです。
さて、月というのは地球からとても近くにありますが、地球と他の星の間は途方もなく遠いです。だから、よその星からロケットに乗って宇宙人がやってきたら、人間は直ちに宇宙人に弟子入りして技術を学ぶべきです。攻撃なんてしている場合ではありません。(たいていの天文学者は宇宙人に会いたいと思っています。)
★★★はなし3 月?惑星は近い。そして「はやぶさ君」登場
地球と月の距離ですが、この部屋に直径30センチの地球儀があるとすると、月はその直径の30倍、約9メートル先にあります。
みなさんは、地球を飛び出すと、近くにたくさんの星があると思っていませんか? いいえ、なんにもないのです。一番近い月でさえ、実際は40万キロメートル先にあるのです。(ちなみに、地球と太陽との距離は、地球と月の距離の400倍、1億5千万キロメートル!)
人類は何度もロケットを打ち上げてきましたね。初の人工衛星スプートニク1号は1957年です。そのわずか12年後、アポロ11号が月面に着陸しました。月に行くのはすごく難しいことなのです。スプートニク?ショック以後の技術改良はどれほどのものだったでしょうか。
ちなみに、このアポロ宇宙計画にはいろいろな話題や憶測がありますね。大戦中、イギリスを爆撃するロケットを作っていた旧ドイツからアメリカに亡命した技術者たちがアポロ、ソ連に亡命した技術者たちがスプートニク、と二手に分かれて宇宙技術開発を競ったことになります。時はべトナム戦争の頃、世界がアポロ11号に熱狂しましたが、その裏には簡単には語れない事情があったこどでしょう。
そして、惑星。関西では「遊星」とも言いますね。私はこちらの方が好きです。松本零士さんは『宇宙戦艦ヤマト』で「遊星」を使っています。子どもの名前で「惑星くん」はいだだけませんが、「遊星くん」ならいるかもしれませんね。
惑星は、動かない星=恒星の周りを回りますが、惑星のスター(?)、火星についてみてみましょう。
火星を定点観測すると、行ったりきたり、逆行するような変な動き方をしています。このことから、地球が公転していること、火星は地球の近くにあること、という2つのことがわかります。
太陽の周りをすごいスピードで回っている火星を、やはり太陽の周りを回っている地球から見るから、不規則で変な動きに見えるのです。そして、動いて見えるというのは、近くの天体だからです。遠くの景色はついてきますが、近くのものはついてこないで動いて見えます。
いよいよ、?「はやぶさ君」です。
人工衛星というのは、地球周回軌道、大気圏外を回ります。現在世界で9カ国が人工衛星の技術をもっていて、10カ国目をめざしているのが韓国です。
いっぽう、人工惑星というのは、太陽を中心にして回る人工惑星軌道に打ち上げます。この技術は、ロシア、北米、ヨーロッパ連合(13カ国)と日本の4極にしかありません。
はやぶさは、?この人工惑星軌道間に乗り、小惑星イトカワの軌道に遷移(せんい)して、最後は大気圏に再突入して地球に戻ってきました。これがどれほどすごいことかわかりますか。人工惑星軌道間の移動も大気圏再突入も至難のわざです。(※??む、難しい…)
★★★★はなし4 その他いろいろ
国際宇宙ステーションは、上記の世界4極、16カ国で運営しています。日本の得意分野は無人貨物船。ステーションに食料や被服を宅配します。ステーションで出たごみの焼却処理も引き受けています。日本らしい、細やかな仕事ですね。もっとアピールしましょう。?ロシアは有人船、旅客が得意分野です。
さて、日本の宇宙技術者は、「軍事研究をしている国に負けたくない」という強い思いがあります。はやぶさの大気圏再突入ですが、そもそも、大気圏再突入は、大陸間弾道弾(ミサイル)のために開発されました。ミサイルを作っていない日本は、作っている国に負けたくない、負けられないと、自前ではやぶさの帰還技術を開発したのです。
余談ですが、はやぶさ帰還のために軍基地を提供してくれたオーストラリアはすごい親日国ですね。小惑星イトカワから何か危険な物質を持って帰ってくるかもしれなかったのですから。(日本国内への着地は地理的条件から不可でした。)
☆☆☆☆☆このあと、人工惑星軌道に衛星を打ち上げる※ M-V(ミューファイブ)ロケット、無人宇宙貨物船HTVの打ち上げ映像、流れ星のはなし…興味深い話題がまだまだ続きました。
※ M-Vロケットは、全段固体燃料を使用する3段式ロケットです。目的に応じてさまざまな軌道に投入される科学衛星の打上げに対応するために、必要に応じて第4段を追加することができます。全段固体推進剤を使い、惑星間軌道にまで衛星を打ち上げることができるロケットは世界でもM-Vだけです。(JAXAホームページより)
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<質疑応答>
この日の質疑応答タイムは、いつものサロンと違って、オトナ天文女子の鋭い質問が次々飛び交い、富田先生もたじたじでした☆
Q.夏の大三角形が今ごろ(12月21日)見えるそうですが。
A.今なら、17時半ごろ、西の空低くに宵の明星が出ますので、それより高いところにとんがった二等辺三角形が見えます。その一番明るいのが織姫(ベガ)です。大阪は西に開けているので夕日のまちです。地図でみると、日本の中で西に開けているところは少ないのがわかります。
Q.宇宙は膨張している?
A.宇宙が膨張しているなら、地球も、私の身体も、あなたと私の距離も、どんどん膨張しているはずです。私のはなしがおもしろくないから皆さんが離れていくのは、じつは宇宙の膨張のせいだといえますね(笑)
でもそうはなっていません。古生代には恐竜がいました。もし、太陽と地球の距離が膨張しているとしたら、古生代は灼熱で、恐竜は生きられなかったはすです。
宇宙が膨張していることと、私たちの生活空間が膨張していないことの折り合いは、「宇宙空間の膨張を重力が振り切っている」ということで説明しましょう。
物と物は万有引力で引き合います。そして、引き合ってしまったものは宇宙の膨張を感じません。感じなくなってまとまったものを天体と呼びます。(※ 私たちはことごとく引き合って、つりあって、静止している。感慨深い…)